母が医師から手術を勧められた日

介護が必要な私の母は、難病指定のパーキンソン病を患っている。もうこの病気とも10年近くの付き合いだろう。5年前はまだ一人でも歩けたが、今では介助無しでは歩くことも難しい。

パーキンソン病とは、脳から出される電気信号「ドーパミン」が正常に行われなくなり、身体を動かすことが不自由になる病気だ。毎日食後や就寝前には沢山の薬を飲み、身体を動かせないので趣味の家庭菜園も、代わりに作業する私の姿を、羨ましそうに見ている。

先日の通院日、主治医からこう提案された。
「手術をお勧めします」
かれこれ長い間投薬生活を続けてきた為か、薬の効果が期待出来なくなっていたのだ。この言葉と同時に、「脳深部刺激療法」と書かれた1枚のDVDを渡された。

帰宅後、親に観せる前に1人でDVDを確認した。

手術内容は、身体の胸部にパルス信号発信器を埋め込み、そこから脳にかけて電気信号を送るワイヤーを通し、人工的に電気信号を発生し身体を動かすといったモノだった。映像の中には、母と同じように身体の不自由な女性が、手術後には元気に農作業している姿が映されていた。

手術なので勿論リスクはある。そして、病気を治す事は出来ず、進行を遅らせる目的という事も丁寧に伝えていた。手術に成功しても、定期的に通院するのは変わらず、体内に埋め込む発信器は電池式の為、4年に1回は交換する為の手術が必要になる。
さらに手術はいつも通院している病院では行えない。

なぜもっと早く手術を勧めてくれなかったのだろう?

とDVDを渡された時に思っていた。しかし、DVDを観た後、手術を受ける母の姿を想像すると、DVDを母に観せる事に抵抗を覚えた。

数日悩んだ末、母にDVDを観せた。これから自分の身体に機械が埋め込まれると分かった上で、「受けてみる?」の問いに「手術を受けたい」と私にはっきりと答えた。

次の通院日は1ヶ月後。

母とっても、私にとっても、今後を左右する出来事が起こる事になる。

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